ぼくが以前、島に旅行で来たときに一番感動したのは、綺麗な海でも美味しい食事でもなく、島の人とのふれ合いでした。
何がきっかけだったんだろう。
たまたま入ったお店で島の人と会話が始まり、一緒に飲めて、話し、笑い合えた。
このことがとても嬉しく、その島はぼくにとってただの観光地から、もう一度来たい場所になりました。
リゾートホテルに泊まって観光地を見て回るのもいいけど、こういった島の人と繋がれることが旅の楽しみだったりします。
きっと”旅行”じゃなくて”旅”が好きな人は、この気持ちを分かってくれるんじゃないでしょうか。
今日はそんな旅好きのあなたにオススメしたいツアーを紹介します。
奄美大島の大和村にある小さい集落、国直で開催されている夕焼けビールツアーです。
夕焼けビールツアーってなに?
国直集落は、人口が120人くらいの小さな集落です。
集落で生まれ育ったある人が、自然や文化を守り伝えるためにNPO法人TAMASUを立ち上げました。
私たちは、「たます」の精神に学び、祖先から受け継いだ自然や文化、コミュニティーといった奄美の宝を守り伝え、島民はもとより奄美に関わる全ての人々がその恩恵を享受できる環境づくりに寄与することを目的として平成27年3月18日、特定非営利活動法人TAMASUを設立しました。
(ホームページより引用)
NPO法人TAMASUが国直まるごと体験と名付けてアクティビティーやツアーを企画しています。
その中のひとつが、この夕焼けビールツアーです。
時間は夕方の6時ごろから8時くらいまで。
参加費はいりません。自分が飲む分のビールだけを持ってきたら誰でも参加できます。
もともと、これは集落の人たちの社交場でした。
気温があったかくなる5月ごろから、夕暮れの時間に仕事を終えた集落の人たちが浜辺に集まってきます。
そして夕日を見ながらビールを飲む。
これが集落の人たちの交流であり、楽しみでした。
はじまったのはいつだったか。
集落の人に聞いたところ、もう数十年前から自然と夕日を見ながら集落の人と飲むようになったと言います。
「これが一日の一番の楽しみなんだ。」と冷奴をつまみにビールを飲むお父さん。
そんな集落の人たちの日常を、おもしろ半分でツアーのひとつにしてしまったのが、夕焼けビールツアーです。
はじめは冗談半分で始めたツアーでしたが、意外にも人気が出てリピーターもたくさんいる人気ツアーになってしまったそう。
「毎日見てて、飽きないんですか?」
おじちゃんに聞いてみました。
「同じ夕日はないからね。毎日見てても綺麗だよ。」
夕日がいよいよ沈むとき、みんな話すのをやめて同じ方向を見つめる。
1秒ごとに鮮やかになっていく空の色。
なんて贅沢な時間なんだろう・・・
自然の壮大さに完全に心奪われてしまいました。
国直は集落の一体感が魅力
国直は奄美大島の中でも、個人的にとても注目している地域です。
というもの同じ大和村の中でも平均年齢が若く、人口も減少していません。
ぼくが先日訪れたときも若い人や子どもが多く、聞いたところUターンで戻ってくる人も結構いるようです。
海に面した国直集落は、常に海と共に生きてきました。
数年前、台風で波が高くなったとき、国直も被害を被りました。
役所は被害を抑えるために堤防を高くしようとしましたが、堤防が高くなると海が見えなくなり、集落と海が分け隔たれてしまいます。
海と生きる国直にとって、それは大問題。
結局、集落の人の反対により堤防の計画もなくなり、別の手段で台風の影響を軽減しているようです。
まだ数回しか行ったことない国直ですが、他の地域にはない一体感を感じるのです。
人口がちょうどいいのか、古くからの文化なのか、何がそうさせているのかはよく分かりません。
ただ、ぼくはこの国直の一体感は、夕日を見ながらビールを飲むところから生まれているような気がします。
毎日、集落の人たちが集まる場があること。
それがきっと国直の一体感を生み出して、みんなが帰ってきたい場所になっているんじゃないでしょうか。
これからの観光に必要なこと
ぼくはこの夕焼けビールツアーが、観光としてとても秀逸だなぁと思います。
奄美大島はこれから観光地として拡大していきます。
ホテルも建てていますし、リゾート気分を味わえる空間も増えていくでしょう。
都会から観光に来て、リゾート気分を味わってお金を落として帰っていく。
それはきっと、今の奄美にとってはありがたいことなんだと思います。
しかし、綺麗な海でリゾート気分を味わうだけなら沖縄でもできる。
ハワイやモルディブにいく方が絶対いい。
まだそこまで観光地として開発されていない奄美は、今あるものをどう活用するかが大事になってくる。
きっと今の観光客の人は、リゾートやゴージャスなおもてなしはそんなに求めていない。
それよりもこの国直のように、島の人とふれ合える時間や場所を求めている気がします。
島の人からしたら当たり前で、なにが面白いのか分からないようなことが外の人には面白かったりする。
わざわざこれから来る人のために新しいものをたくさん用意しなくてもいいんです。
それよりも、今ある日常の中に外から来た人が入れる隙間を少しだけ開けておく。
そんな観光の方がこれからは喜ばれるんじゃないかな。
少なくともぼくは、その方が嬉しい。
誰かの家にお邪魔したときに、普段使わないお皿に豪華を料理を出してくれるのは確かに嬉しいけど、どこかよそよそしさを感じてしまう。
それよりは毎日飲んでいる味噌汁を一緒に飲めた方が仲良くなれた気がしないですか?
ぼくは今度、たこ焼き器を持ってまた国直に行く約束をしました。
8月は国直から見える海のちょうど真ん中に夕日が落ちるみたいです。
ちなみに夕焼けビールツアーの他にもいろんなツアーがあるので見てみてください。
ぼくは、集落ぶら歩きツアーがオススメです!